近年、ソルトウォーターでのルアーゲーム熱が沸騰しています。
この記事をご覧いただいている方の中にも、バスフィッシングだけでなく、河口の汽水域や堤防などで、シーバスやチニングゲームにトライしているアングラーも多いのではないでしょうか。
潮風を浴びながらのソルトゲームは、広大な海を目前にしての開放感があり、淡水でのバスフィッシングとはまた違う魅力があります。大海原に大遠投が決まるだけでも爽快ですよね。
ルアーによる海釣りの中でも、比較的身近で少々特殊な対象が「軟体動物のイカ」。魚に親しんできた釣り人にとっては、未知な部分が多い対象と言えます。
イカは、エギと呼ばれるルアーで釣る事が可能。エギ(餌木)は、江戸時代からのイカ釣り漁に使われ始めた、日本古来の伝統的な疑似餌(ルアー)です。
このエギ(餌木)を使ったルアーフィッシングが「エギング」。エギングで釣りをする人は、「エギンガー」と呼ばれています。
釣れたイカは食味も格別で、魚を食べるのが苦手な方の中にも、「イカは別格」という人も多い美味な肴(つまみ)ですね。
バスフィッシングは、全てがアメリカ発祥。言わば、輸入されてきた技術やテクニックを国内に持ち込んで、今日まで日々進化してきました。
対するエギングは、日本古来の伝統あるルアーフィッシング。勿論、道具や釣り方もバスフィッシング同様に進化を続けている魅力的な釣りです。
国内に居るのであれば、日本オリジナルのルアーフィッシング=「エギング」を一度は体感してみてはいかがでしょうか。
特別な釣り船などに乗らなくても、エギングはオカッパリ(ショアソルト)で楽しめます。
本記事では、エギングの基本的な釣り方や必要な道具を紹介。エギングワールドに踏み出す参考にしてみてください!
目次
さあ、エギングの世界へ!! | その魅力と特徴
ルアーフィッシングでイカを釣るエギング。その魅力と特徴を紹介します。
エギングの魅力
イカの魅力をストレートに語ると、何より食べて美味しい!
子供の頃から、お祭りなどの夜店でイカが焼かれた香ばしい匂いに惹かれた事はないでしょうか。
勿論、夜店で出るようなイカ焼きだけではなく、様々な調理法で楽しめる食材です。
そのイカを、オカッパリで自ら釣る事ができるとなれば、釣り人としてチャレンジしてみる価値は大アリ!見事イカを持って帰れば、ご家族、ご近所、友人にもおすそ分けで喜ばれそうです。
また、エギにバイトしたイカがグィーンと引く独特なファイトもエギングの魅力。数釣りを楽しめる季節、大物を狙える季節など、シーズンによって釣れるサイズ感も異なってくるので、バス釣りとは違ったアタリや引きの強さを楽しめます。
エギングのターゲットを知る
エギングの代表的な対象は、「アオリイカ」や「コウイカ」。これらがエギングの主なターゲットです。
中でも代表的なのがアオリイカで、日本の海では本州以南に棲息。地域によって「シロイカ」や「アカイカ」とも呼ばれ、肉厚で甘みがあり、イカの中でも人気が高い種類です。
沿岸部に生息するのでショアのソルト、つまりオカッパリで釣りやすいのもアオリイカ。最大5kg程のサイズまで成長するものもいますが、オカッパリのターゲットでは1~3kgあたりが主流となります。
アオリイカは「年魚」と呼ばれる1年でその生涯を終える仲間。バス釣りで言えば、ベイトフッシュのワカサギやハゼ、アユも「年魚」に該当します。
春の産卵後に孵った子イカが、夏にかけてベイトフィッシュを食べまくり、秋にはエギで釣れるサイズにまで成長するので、食欲は相当に旺盛と言えますね。
冬場は深場に落ちるため釣りにくくなりますが、翌春には見事に大型化し、産卵の後にその生涯を終えます。
体表の斑点が横長に伸びた斑点でシマシマ模様がオス、小さな丸い斑点が無数に散らばっているのがメス。大型化するのは比較的オスの方ですね。
エギングのシーズン | 大物狙いの春、初心者でも楽しめる秋
エギングのシーズンはほぼ通年ですが、特に「春」と「秋」がトップシーズン。春先の産卵期3月頃から6月いっぱいが前半シーズン、春の産卵後に孵った子イカ(「新子」と言われる)が、活発にエギにアタックする様になってくる秋の9月~11月にかけてが後半シーズンです。
中でも秋の後半シーズンは、子イカがある程度成長し、エギに興味を持った複数の個体が果敢にチェイスしてくる時期。数釣りが狙えるので、エギング初心者には最もトライしやすい時期といえます。
夏の海水浴シーズンが終わって頃から、海辺に出かけてトライしてみるのに丁度いいですね。
エギングの狙い目ポイント
アオリイカは、岸に近い海藻帯(藻場)に卵を産み付けることから障害物を好む傾向。ですが、エサを求めて岸近くから時には沖まで回遊するので、様々な場所で釣る事ができます。
漁港や堤防といった護岸エリアから、磯場、ゴロタ浜、砂浜まで、幅広い場所がエギングのスポットに。
この項では、エギングができる場所を探す方法、各場所で狙い目となるポイントを紹介します。
エギング釣り場の情報収集
エギングが狙える場所探しは、事前にネットでの情報収集がおすすめ。次のようなサイトで実績あるスポットを見つけることができます。
エギCOM
アオリイカのエギング釣果情報が日本最大級!15万人のイカ釣り専門のSNSコミュニティーです
エギングの釣り場情報 - 海の釣り場情報
釣果投稿型 釣り情報サイト カンパリ
全国の釣場情報が見れるサイト。サイト内で「アオリイカ」「エギング」と検索してください。
その他にも、ネット検索によって各地方のスポットに特化した情報サイトが見つかります。
エギングのポイント
エギングの狙い目となるポイントは次の3点です。
- 潮通し
- ベイトフィッシュ
- ストラクチャー
春の産卵期、アオリイカは岸沿いにある藻場に産卵します。
なので、特に春のオカッパリによるショアソルトフィッシングでは、岸沿いシャローエリアにある藻場(バスフィッシングで言うウィード)周辺がターゲットになります。
この時期、産卵前の体力を付けるためにベイトフィッシュを荒食いする大型のイカが狙える時期。藻場が無い場合でも、漁港の防波堤で潮通しの良い先端や、船道となるいわば人工的なブレイクライン近辺のボトムに、根(岩や岩礁)が点在する場所が狙い目ですね。
砂浜に続く磯場周りの「沈み根」や「海藻」も小魚の餌場となりますので、それを捕食するイカが待ち受ける場所となります。
こうしたポイントを考えていると、何かバスフィッシングの戦略と通じるものがありますね。
「池や湖や川」と「海」というフィールド、魚と軟体生物という違いがあっても、フィッシュイーターの生態には共通点が多いのかもしれません。
エギのバリエーションとアクション
エギングで使うルアー「エギ」は、パッと見る限りどれもほぼ同じ風貌。エギング未経験の人が見た場合、どれも同じ外見・デザインに見えてしまいます。
ただ実際は、サイズ(ウェイト)、沈下速度、カラー、ラトル・ノンラトル等の組み合わせ、それぞれ特有のアクションといった様々な要素があり選択肢が豊富。独特のシルエットに、内部に込められた固有の特性、そして鮮やかなカラーリングがエギの魅力です。
基本的なエギの性能やスペック、それそれの使用用途、おすすめのエギを紹介します。
エギのサイズ(ウェイト)
2.5~3号(10g~18g)
浅場や、秋の「新子」狙いにジャストサイズ。初心者はまずこのサイズで1匹釣りたいですね。
3.5号(20g)
このサイズがオールラウンド。押さえておきたいサイズです。
4号(25g)
春、産卵絡みの大型キロアップ狙いのシーズンに。遠投性良く、深場も攻略可能です。
沈下速度
スタンダードタイプ
沈下速度が平均的な約3~4秒/m。まずはこのタイプが基本ですね。
シャロータイプ(S、SS)
沈下速度約5.5~6秒/mで浅場向き。沈む速度が遅いので、他と比べると根掛かりしにくいのがメリットです。
ディープタイプ(FS(ファーストシンギング))
沈下速度約2秒/mで水深10m以深の深場向き。早春の沖目狙い、向かい風でのキャスト、潮の流れが速い場所に有効です。
カラー、色
オレンジ、ピンク
曇り、雨、薄暮の時間帯に。派手なカラーは、海中での視認性が高く、水深や潮流の向きを探るパイロットルアーになります。
遠目からもエギの位置が把握しやすく、障害物を避けて根掛かりを回避しやすいので、エギ操作の練習にもピッタリ。エギをチェイスしてくるイカの様子も観察しやすいので、エギング入門用の必須カラーと言えますね。
ダークカラー(黒、茶系)、ナチュラルカラー(青、緑系)
日中や、食い渋った時、潮が澄んで警戒心高めな時に。
蛍光紫(ケイムラ系)
紫外線を浴びると紫色に光る。日中の使用で、発光してイカへアピール。
下地(テープ)
エギは、布地の下にテープが巻かれています。このテープもそれぞれのエギを特徴付ける重要要素。
虹テープ(ホログラム)
いつどんなときでも、海中で輝きでアピールしてくれる定番!
白、シルバー
腹側が明るめに配色されたモノは、早朝や夕方など薄暮の時間帯に有効。
ゴールド
晴れた日中、水が濁り気味の際に効果的。
おすすめのエギ
デュエル EZ-Q ダートマスター ラトル パタパタ(2.5~3.5号)
根掛かりしても針が伸びて回避できる「トリックフックケイムラ仕様」。
ダイワ エメラルダス ダートII(2.5~4号)
スローフォールで、通常の沈下速度では攻め切れない場所を狙えるエギ。
ヨーヅリ パタパタQ (2.5~3.5号)
根掛かりしても針が伸びて回避できる「トリックフック」を搭載。
ヤマシタ エギ王 K ベーシック(3.5号)
ヤマシタ エギ王 K スーパーシャロー(3.5号)
沈下速度8秒/mのスーパースローシンキングが、エギにイカを抱き付かせるスキを与えます。
エギング用タックル
入門用としてもおすすめな「エギングタックル」を紹介します。
ロッド
バス用ロッドでも何とか使えない事は無いですが、エギングではエギをシャクリ続ける操作がメイン。沖合までの遠投性能や、延々と「しゃくる」操作性を考慮し、8ft.3in.~8ft.6in.程度の専用ロッドがおすすめです。
エギングはシャクリの上下動が激しいので、エギング用ロッドは1日振り続けても疲れにくい絶妙なバランスに仕上がっています。
更に、大型イカのジェット噴射のような引きにも耐えられる様にバット部分がしっかりとした設計。適度な長さがある事で、大物イカでもバラシ難く、ロッド全体で強い引きをいなせるのが専用ロッドのメリットですね。
「エギング用のタックル一式があれば、チニングや、シーバス等ソルトのルアーフィッシング全般に流用できる」と言われる程、エギング専用ロッドは優れた性能を持っています。スタンダードなグレードでもいいので、エギングタックルを一式持っておくと重宝しそうですよね。
汎用性が高いモデルは、「ML(ミディアムライト)クラス:2.0~3.5号(6~20g)のエギに対応」または「M(ミディアム)クラス:2.5~4.0号(10~25g)のエギに対応」。どちらか1本あれば、入門用途して十分活用できますね。
入門用におすすめのエギ用ロッドを紹介します。
リール
エギングは、2500番~3000番台のスピニングリールが主流。バス用にも流用可能な2500S番台がいいですね。
最初は、手持ちのバス用スピニングリールでスタートしてみるのもいいかもしれません。
ドラグは、エギを強くシャクった時に音が出るくらいに調整してください。
春と秋後半の大型サイズが混じる季節は、若干強めに調整する事も。
次のリールは、エギング入門用としてコストパフォーマンスが高く、バス用途でも使えます。
エギをシャクって、余分なテンションをかけずにフォールさせるため、バランスと操作性が良いダブルハンドル仕様がエギングでは多用されています。
専用リールでも比較的コストパフォーマンスに優れたモデルが多いのも特徴。価格の高いモデルは、より軽量で快適なエギ操作が可能です。
ライン
遠投性能と、キビキビとしたエギ操作が必要となるエギングではPEラインが主流。0.6~0.8号を150~200m巻いておけば十分です。
リーダー
エギングで狙うポイントは岩礁帯など根周りが多く、シャクリのアクションが根ズレによる摩耗を引き起こしやすい場合があります。
その為、PEラインにショックリーダーが必須。リーダーは、フロロの2.5号~3号を80㎝~150㎝程度付けてください。
※食い渋っていると感じたら、リーダーをワンランク細い1.5~2号に落としてみる事も効果的です。
エギング特有のテクニック(バスとの違い)
エギングの時合い
海釣りでキーとなる潮の流れはエギングでも重要。特に潮の流れが効く「大潮」や「中潮」のタイミングが、大型サイズを狙うのにベストです。
満潮、干潮のそれぞれ1時間程の「潮止まり」以外は、潮の流れが効いているのでチャンスタイム。寄せ波と、岸に当たって跳ね返った波が当たるところに「潮目」が生じていたら、そこはプランクトンやそれを補食する小魚等のベイトフィッシュが集まる狙い目となります。
また、磯場や砂混じりのサーフでは、朝方満潮を迎える日の場合、干潮に向かって徐々に潮が引いていくので、明るい日中に沖側の沈み根といったスポットへのアプローチが可能に。より広範囲を攻めることができます。
エギのアクション、シャクリ
エギングで使用するエギは、シャクリと呼ばれるリフト&フォールがアクションの基本です。
ですが、難しく考える必要はありません。
バスアングラーであれば、ダートトアクションを得意とするソフトベイトに重めのネイルシンカーやジグヘッドを埋め込んだワーミング、スローシンキングのリップレスミノーによるダートアクションが近いイメージ。こうしたルアーで、リフト&フォールやトゥイッチによるダートアクションを行う要領だと考えてください。
ただ、バスフィッシングは比較的手首を使った手元でのアクションが多いのに対し、エギングのシャクリは腕全体をロッドの延長として使います。
ロッドを大きく上方に跳ね上げるような感覚で2回ほど派手にあおり、エギがダートする振り幅をできるだけ大きくする様に操作してください。
初めは、少し大げさなエギングのシャクリに戸惑ってしまい、ついつい手元だけのアクションになってしまうかもしれません。
しかし広大なソルトでは、まずルアーの存在を目立たせることが重要。エギング特有の派手なシャクリ・ロッドワークでこそ、海中で最も魅力的にアピールしてくれる様にエギ自体が設計されています。
そうしたエギングのアクションに慣れるほど、釣果に直結すると言えますね。
キャストして着水後、エギはヘッド下方にシンカーが付いているので、頭を下げながらゆっくりとフォールしていきます。
ロッドの先端を水面近くに下げ、糸フケはなるべく取ってラインに僅かなテンションをかけた状態で、ゆっくりとボトムまでフォールさせてください。
できれば、ラインを張らず緩めずで送りながらナチュラルに落とし込むのが理想で、フォール中にイカが抱き付いた際に感じる違和感がアタリとなります。
注意点としては、エギは複数のカエシが無いフック(カンナ)を装着しているので、ボトム着底後からのズル引きは厳禁。すぐに根掛かりしてしまいます。
エギングのアワセ
エギングでは、エギのフォール時にイカが抱き付く事が多いですね。
アタリの出方は、フォール中に重みを感じたり、ラインの出て行くスピードが急に速まったり、逆にラインが出るのが止まったり、横走りしたり様々。とにかく、違和感が生じたら即アワセてください。
アワセによって、エギに抱きついたイカの本体が若干ズレて、エギ後端のカンナ(フック)にフッキングする仕組みです。
フッキング後、イカは口からのジェット噴射で反対側へと逃げようとします。
なので、根や藻場に潜り込まれない様、ロッドの絞り込みに耐えてください。
加えて、カンナ(フック)にはカエシが無いので、フッキング後はラインテンションを決して緩めない様、一気に巻き上げる必要があります。
エギングのランディング
エギングの相手は、10本の無数の吸盤の付いた手足を持つ軟体生物。ランディングネットには胴の先端から入れる様にしてください。
手足側からだと、ネットの枠にしがみついたり、入口に絡みついて肝心の胴体が入り難くなります。
持ち帰って食べる事が前提の場合、ギャフと呼ばれるハリで引っ掛けるランディングツールを使用してもいいですね。
ネットでの取り込み時はイカが警戒して暴れる可能性もあるので、素早く引っ掛けて回収できるメリットがあります。
また、できれば引き上げる前にスミを吐かせると、自分の衣服や足回りを汚さずに済みます。
防波堤上でスミを吐かれた場合は、折りたたみバケツで海水をすくって流しておくのがマナー。気持ち良い釣り場環境の維持にご協力をお願いいたします。
まとめ
エギングは、釣るまでの戦略やイカとの駆け引きといった醍醐味を含め、ゲームフィッシングの要素が満載!バスフィッシングと通じる要素も多く、その上でまた違った釣り方・魅力に溢れています。
何より、釣ったイカを持ち帰って食べても美味しいので、釣りの後も楽しめるターゲットですね。刺身にして醤油に付けるだけでも、生く料品として購入したイカとは違う格別の味がすると思います。
「食べる為に釣る」といった狩猟民族の魂全開で、是非とも獲物をゲットしてみてください!
ただ、釣ったイカをシメずに保管すると、スミを吐かれて真っ黒になってしまう事も。
鮮度高く持ち帰って美味しく食べる為にも、釣った直後の「シメ」が肝心。その後、クーラーボックスで保存して持ち帰ってください。
イカシメ用具
体表を上に寝かせ、目と目の間にイカシメを約45度の角度で、最初は胴向きに刺し、次に足向きに刺して全身がサッと白く透明になったら完了。
大きなイカは胴向きも足向きも左右に2回刺し、半身ずつ両側をシメます。
偏光グラス
ソルトウォーターは、淡水より乱反射が多い傾向。キャスト後のエギの所在や、それを追うイカのチェイスの様子を見落とさないためにも偏光グラスがおすすめです。
その他、釣り攻略・入門記事
その他にも、おすすめバスタックルのインプレや攻略法、他魚種の入門などを記事にしているので、参考にしてみてください。