近年のベイトリールは、キャストフィールや巻き心地、剛性感が飛躍的に進化しています。
さらに適合ルアーの領域が広がり、トラブル回避性能も大きく向上。
バックラッシュ等のトラブルがつきもので、「ベイトリールは難しい!」と言われていた時代がウソのようですね。
現代のベイトリールは、上級者だけのアイテムではなく、はじめて使う方でも最新性能をストレスフリーに楽しめるようになりました。
ですが、遠投性能が高い遠心ブレーキモデルなど、機種によっては扱い難いと思っている方も多いのではないでしょうか。
自分もそう感じていた1人です。
ただその扱い難さは、キチンとリールの設定ができていない事にも要因があるかもしれません。
本記事では、あたり前だと考えていたベイトリールのブレーキ設定について見直します。
目次
ベイトリールのブレーキシステム
ベイトリールには、スプールの回転を制御するブレーキシステムが搭載されています。
これは、キャスティング時の過度な回転を抑制し、バックラッシュなどのトラブルを防ぐ機構。
ベイトリールは、「キャスト開始直後の初動」や「キャスト後半にルアーが失速するタイミング」などで、スプール回転がライン放出量を上回り、ラインが浮かび上がりやすい傾向にあります。ラインが浮いたまま更にスプールが無理やり回転し続けると、糸がらみのバックラッシュが発生。
こうした過度なスプール回転を適切に制御し、トラブルを回避するのがブレーキステムの役割です。
代表的なブレーキシステムは「マグブレーキ(マグネットブレーキ)」と「遠心ブレーキ」の2種類。それぞれの特徴は次の通りです。
マグネットブレーキ
▲ダイワのマグネットブレーキ「SVシステム」
スプールに取り付けられた金属パーツ(オレンジ)が、サイドプレートの磁石内で回転し、ブレーキを発生
マグネットブレーキは、磁石が発生させる磁界を使用するシステム。
磁界で回転するスプールの金属パーツが過電流を発生させ、その回転に対して逆方向に力が加わる電磁誘導の法則を利用。
つまり、スプール回転に応じた強さのブレーキ力が発生する仕組みですね。
比較的バックラッシュなどのトラブルが少なく、誰もが使いやすいシステムがマグネットブレーキ。
磁石(マグネット)が固定式であっても、スプール回転に応じてある程度はブレーキ力が変化します。
その上で、ダイワの代表的なマグネットブレーキ「マグフォースZ」や「AIRブレーキ」は、金属パーツを可変で移動する構造を実現。スプールの遠心力や慣性力に応じて、ブレーキをより最適に制御する事が可能となり、遠投性能とトラブル回避性能を両立させています。
また、デジタルでブレーキを制御するシマノ DCブレーキもマグネットブレーキの1種。
スプール回転をセンサーで読み取り、CPU制御で最適なブレーキ力を発生させる画期的なシステムです。
遠心ブレーキ
▲シマノの遠心ブレーキ「SVSインフィニティ」
スプールに取り付けられたシュー(白)が、サイドプレートの金属部を締め上げるようにする摩擦をブレーキに使用
遠心ブレーキは、スプールが回転する遠心力を利用したブレーキ。
スプールに装着されたパーツ(ブレーキシュー)が、スプール回転に応じてブレーキパイプ等のパーツに接触し、その摩擦によってブレーキを生み出します。
キャスト後半の伸びが良く、飛距離に有利なシステムが遠心ブレーキの特徴。
遠心力が弱まるキャスト後半は、物理的にパーツが接触する事が無くなり、ルアーの飛びをスポイルしない機構ですね。
古いシステムの遠心ブレーキは、空気抵抗が大きなルアーを投げ難かったり、逆風でのキャストが難しい印象がありました。
しかし、シマノの最新遠心ブレーキシステム「SVSインフィニティ」は、キャスト開始~初期動作完了までをしっかりと制御していて、向かい風でも比較的投げやすいように感じます。
それでも遠心ブレーキは、マグネットブレーキと比較すると、バックラッシュなどのトラブルが多いイメージがあるのではないでしょうか。
実際、空気抵抗の大きなルアーや、キャスト中に急な突風があった場合など、ラインが浮き上がりやすい傾向。
勿論、指でスプール回転をコントロールするサミングがキチンとできていれば、そうしたトラブルも押さえられます。
ですが、サミングが不十分であったり、強風などの悪条件ではトラブルが多く、「遠心ブレーキは上級者向け」といった印象がありますね。
ただ、遠心ブレーキモデルであっても、リールのセッティングを見直せば意外とトラブルが少なく、遠投性能も十分に発揮可能。
次の項目では、もう1つのリール機構「メカニカルブレーキ」の調整について紹介します。
正しいゼロポジション、ゼロ設定 | メカニカルブレーキの調整
▲「SHIMANO」のロゴ右側にあるツマミがメカニカルブレーキ
ベイトリールには、マグネット・遠心と言ったスプール回転を制御するメインブレーキの他に、「メカニカルブレーキ」「テクニカルブレーキ」と呼ばれる機構があります。
メカニカルブレーキ(テクニカルブレーキ)は、スプールのシャフトをネジ式のツマミで締め上げてガタつきを調整。スプール回転の中心となるシャフトを左右から押さえこむので、摩擦によるブレーキが作用します。
メインブレーキが高性能な現代のベイトリールでは、このメカニカルブレーキを「ゼロポジション」「ゼロ設定」に合わせる事を推奨。
つまり、スプールのガタつきがギリギリ無くなる程度で調整し、必要以上にメカニカルブレーキを締め付けない設定方法です。
確かに、ゼロポジション・ゼロ設定のメカニカルブレーキは、スプール回転をスポイルせず、マグネットや遠心によるメインブレーキ性能を最大限に発揮できます。
しかし、メカニカルブレーキによる摩擦は、スプールの回転やキャスト状態に関わらず一定に作用する構造。ある程度であれば、突風や逆風、空気抵抗の大きな投げにくいルアーに対して効果的です。
ベイトリールはトラブルばかりで使いにくい、遠心ブレーキはピーキーだ....と感じておられる方は、メカニカルブレーキの設定を再確認してみてはいかがでしょうか。
ひょっとすると、自分の考えていた「ゼロ設定」は、本来の使い方と異なっている可能性もあります。
実際に調べてみたところ、リールの機種によって推奨されるメカニカルブレーキ設定は、微妙に異なる事が分かりました。
次に、代表的なベイトリールのゼロポジション・ゼロ設定について紹介します。
マグネットブレーキのゼロポジション・ゼロ設定
▲ダイワ マグネットブレーキ式リールの取扱説明書
マグネットブレーキは、スプールの回転が弱まっていてもブレーキ力が効きやすい構造です。
遠心力や慣性力に応じた可変式であっても、キャスト全体で必要なブレーキ力を適度に発揮。
その為、メカニカルブレーキを締め付けすぎないゼロポジション・ゼロ設定で、最もメインブレーキのパフォーマンスが活かされます。
最近のダイワ ベイトリールの取扱説明書を確認すると、次のような意味合いの記載があります。
「マグネットブレーキの進化によって、全てのルアーをマグダイヤルの調整だけで制御可能」
その進化したマグネットブレーキ性能を最大に活かせる設定が「スプールガタ ゼロ設定」。メカニカルブレーキでスプールを押さないギリギリの状態、微小なガタつき(0.2mm程度)を残した設定です。
0.2㎜は、シャープペンシルの芯より細く、5lbのフロロカーボンラインと同程度。
左右のガタつきがカチャカチャと分かる程度だと、緩すぎると思います。
クラッチを切った状態で、スプールをリールの上下から2本の指で押さえ、微妙にスプールが動く感触を感じるか感じない程度。カチャカチャと動く状態から、メカニカルブレーキを締め、スプールが動かなくなった設定が丁度良さそうですね。
ダイワの最新ベイトリールには「ゼロアジャスター」を採用する機種が増えています。
ゼロアジャスターは、出荷状態でメカニカルブレーキを最適に設定し、通常のメカニカルブレーキと比べると、ツマミを動かしにくく、不必要な調整が効きにくいので便利。
マグネットブレーキのベイトリールでトラブルが多い方や、イマイチ飛距離が伸びないと感じている方は、ゼロ設定を再確認してみてください。
スプールをベストパフォーマンスに設定し、最初はマグブレーキを強めに設定して投げ込んでみるのがおすすめ。やや強めのマグダイヤル調整でも、投げ方やフォームがしっかりしていれば意外と飛距離は出ます。
自分の中では、まずはノーサミングでキャスト可能な設定で試し、着水時だけ若干サミングが必要な程度まで調整するのがベストブレーキ。
向かい風や急な突風、ルアーの空気抵抗といったトラブルに強い、マグネットブレーキならではのストレスフリーが楽しめます。
遠心ブレーキのゼロポジション・ゼロ設定
▲シマノ 遠心ブレーキ式ベイトリールの取扱説明書
遠心ブレーキはピーキーで難しい、と感じておられる方も多いと思います。
その最大の要因は、メカニカルブレーキのゼロポジション・ゼロ設定にあるかもしれません。
例えば、シマノの最新ベイトリール「20メタニウム」の取扱説明書には、次のような記載があります。
「スプール左右のガタつきがなくなる所から、少しだけメカニカルブレーキを緩めた状態」
これだけ見ると、前項のマグネットブレーキ同様に、カチャカチャと左右に動くほどではないものの、締め付け過ぎず微妙なゆとりが必要だと思えます。
しかし、追記で以下のような記載もあります。
緩めすぎも締めすぎもリール本来の性能を阻害する事があります。
風の強い時のキャスティング、スキッピングなど特定の状況においては適度にメカニカルブレーキを締めた方がキャスティングしやすくなります
つまり、最大限にリールのパフォーマンスを活かすのであれば、スプールのガタつきを最低限に締め込んだ設定がベスト。
しかし、スキッピング時や風がある場合など、状況に応じてメカニカルブレーキを強めに設定する事が推奨されています。これは、スピナーベイトや空気抵抗の大きな重量級ルアー、軽量ルアーといった投げにくいルアーにも当てはまると言えそうですね。
遠心ブレーキは、スプール回転と反作用するマグネットブレーキと異なり、遠心力によるかかり方が極端です。キャスト初動にはしっかりとブレーキがかかりますが、キャスト中にスプール回転が落ちると一気にブレーキ力が低下。
この特性が、キャスト後半の伸び・飛距離にも繋がっているのですが、キャスト中の風やルアーの失速時はトラブルが多いのも事実です。
サミングを駆使できる方であれば、そうした状況でも最高のパフォーマンスを発揮できますが、慣れないうちはメカニカルブレーキによって、スプール回転に依存しないブレーキを活用するのがおすすめ。
締めすぎなければ、メカニカルブレーキを使用していてもそれほど飛距離は変わりません。
メカニカルブレーキが効いている分、メインの遠心ブレーキを若干弱めることで、トラブルの少ない安定した飛距離を楽しめます。
周囲の遮蔽物が少なく、風の影響を受けやすいオープンフィールドの場合、スプールのガタが無くなる位置から10~30度ほどツマミを締める状態が自分的な目安。
小さな湖など、周囲を木々で囲まれたフィールドであれば、ほとんどメカニカルブレーキは締めません。
ただ、強風や向かい風、投げにくいルアーを使用する場合は、さらに60度近くまで締める事も。
クラッチを切った時にルアーがスーッと落ちる程度までであれば、それなりに飛距離は確保できます。
他のシマノリール
▲シマノ 2021アンタレスDC の注油穴キャップ メカニカルブレーキとしても作用するが、操作しやすいツマミ形状ではありません
「基本はスプールのガタがゼロの設定」「状況に応じてメカニカルブレーキを締める」は、大半のシマノベイトリールで推奨されている方法です。
これは、デジタル制御のDCブレーキシステム機の場合も同様。
DCシステムのブレーキはマグネットと同じ原理ですが、どちらかと言えば遠心ブレーキに近い感覚でキャスト中の抜けを感じます。CPU制御によって、マグネット式でありながら、遠心ブレーキに近いブレーキ量をコントロールしているのではないでしょうか。
自分の知る限り、この設定の例外は2021年モデル「21アンタレスDC」。
21アンタレスDCでは、メカニカルブレーキが完全に排除され、オイル用の注油穴キャップだけが取り付けられています。キャップを締める事でスプールのガタは抑えられますが、単に「スプールがガタつかない程度」に締める事を推奨。他のシマノリールのように、状況によって締める説明が省かれました。
CPUの高速化によって進化した21アンタレスDCは、完全にメカニカルブレーキが不要になったようですね。
実際に自分も21アンタレスDCを使っていますが、遠心ブレーキに近いフィーリングを残しつつ、キャスト中にかなり細かいブレーキが効いていると感じました。
シマノのベイトフィネスリール
▲シマノ ベイトフィネスリールの取扱説明書
出典:SHIMANO
シマノのベイトフィネスリールは、独特なマグネットブレーキ「FTB(フィネスチューンブレーキシステム)」を採用しています。
通常のマグネットブレーキや、他社製ベイトフィネスリールと比較すると、かなり控えめなブレーキで、その分キャストフィールは遠心ブレーキに近い爽快なイメージ。
シマノBFSモデルの取扱説明書には、メカニカルブレーキ設定について次のように記載されています。
ロッドを水平にして、クラッチを切り、ルアーがゆっくりと落ちていく程度に調整
ゼロ設定を基本とする他のリールと異なり、シマノのベイトフィネスリールはやや強めのメカニカルブレーキを推奨しているようですね。
ブレーキが控えめなFTBの特性上、スモラバなど軽量で空気抵抗の大きなルアーを投げる用途には、メカニカルブレーキが効果的だと言えます。
古いブレーキ設定のメリット・デメリット
かつてのベイトリールは、次のようなメカニカル・テクニカルブレーキ設定が推奨されていました。
- ロッドを水平にして、クラッチを切る。ロッドを揺すると、ルアーがゆっくりと落ちる程度に調整
- ロッドを水平にして、クラッチを切り、ルアーがゆっくりと落ちていく程度に調整
昔のベイトリールは、今のようにスプールが低慣性な性能では無かったので、キャスティングで高回転域に達すると、メインブレーキだけでは制御しきれなかったと推測されます。
その分、メカニカルブレーキで一定のブレーキ力を確保していたのではないでしょうか。
ただ今のベイトリールでも、メカニカルブレーキを締める事で、ブレーキ設定やキャスティング状況に関わらず、常にしっかりと回転が抑制されるメリットも。
ルアーがスーッとある程度の速度で落ちる程度に調整し、地面にそのまま着地してもラインがブワッと浮かないセッティングであれば、実際のキャスト着水時でのサミングも不要になります。
メカニカルブレーキで回転を制御する分、メインブレーキを弱める事が可能となり、ベイトリールに不慣れな人であれば逆に飛距離が伸びる場合もあるかもしれません。
反対にデメリットは、最新の高性能スプールは極限までに肉薄化され、リール本体に対しても精密な構造。締め付け過ぎたメカニカルブレーキは、そのタイトな性能を阻害し、逆にキャスト中の歪み・異音などを発生させてしまう事もあります。
各リールの説明書に従って、適切な範囲でのブレーキ設定がおすすめと言えそうですね。
まとめ
今の高性能なベイトリールは、スプールのガタつきを最小限に抑えたメカニカルブレーキ「ゼロ設定」が推奨されています。ただ、機種によってその特性は異なり、メカニカルブレーキもさまざまな調整や設定が推奨されているようですね。
基本はゼロポジションのゼロ設定でスプール性能を最大限に活かし、遠心やマグネット等のメインブレーキを強めの設定から試すのがおすすめ。
ですが、どうしてもピーキーに感じる場合、メカニカルブレーキを若干強めてみてもいいかもしれません。
また、自分の愛機をフルパフォーマンスで活用するためには、取扱説明書を読み直してみて、あたり前に感じていたブレーキ設定などを再確認してみてはいかがでしょうか。
基本的なリールの使い方は同じですが、目まぐるしく進化を遂げている昨今のモデルは、それぞれに細かい特性があります。
例えば、スプールへのラインの結び方などもその1つ。
昔であればスプールに結び付けたラインをテープで止めていましたが、現行製品の中にはハッキリとそれを推奨しない事が記されている場合も。
古くからの常識すらをも大きく乗り越え、今のベイトリールは劇的に進化しているといえますね。
現行ベイトリールや各種タックルのインプレも記事にしているので、参考にしてみてください。
入門者におすすめのベイトリール
これからバス釣りをはじめる方、ベイトリールに初挑戦される方におすすめのベイトリールを紹介します。
もっとコストパフォーマンスが高いモデルもありますが、最新の性能を存分に味わえて、それでいて比較的価格が抑えめの機種をチョイス。
最もおすすめは、「ダイワの21アルファスSV TW」。
ライトバーサタイル寄りなモデルですが、しっかりとした剛性感と巻き心地で、重量級ルアーまで対応可能です。ライトテキサスやヘビーダウンショット、5インチ程度のネコリグ、シャッドなどの軽量ルアーも快適です。
また、「20タトゥーラ SVTW」も、2万円を切る実売価格でおすすめ。
21アルファス SVTWより中型~大型ルアー向けですが、ラインの太さや量を調整すればスモラバまで対応可能な幅広さが魅力です。
もっとコストパフォーマンス良くバスタックルを揃えたい方は、次の記事も参考にしてみてください。