古い自動車の中には、少ない数ながら動態保存されている車両があります。
そうした車両が走行している姿を見ると、自動車にさほど興味がない人でも思わず見入ってしまいますよね。現代とは異なるデザインの斬新さ、懐かしさなど、そこには原点に通じる魅力があるのではないでしょうか。
自動車に限らず、古いモノの中には普遍的な価値を伝え続けている製品が数多くあります。
それは釣具・タックルについても同様で、技術や設計が格段に進化した今でも、古くから愛され続けているオールドタックルが存在。
本記事では、その代表的な存在ともいえる「アブ アンバサダー 2500C 」を紹介します。
目次
アブ アンバサダー 2500C | 概要
アブ アンバサダー 2500C(ABU Ambassador 2500C)は、1975年5月に販売された小型のベイトキャスティングリール。
日本での人気は高く、名称を略して「25c」と呼ばれたりしています。
25cは根強いファンに愛され続け、90年代、2000年代と幾度も復刻販売されてきました。
昔発売されていたオールドアブだけでなく、復刻販売されたものを含め、アンバサダー2500Cはノスタルジックな雰囲気を最高に楽しめるリール。年式が古く程度の良い物は、中古市場でも価格が高騰しているそうで、「25c」を使いたい・集めたいという方が多い事を物語っています。
といっても、最新の道具での釣り慣れている方にとっては、流石に古い機構のリールは扱い難いかもしれません。
オリジナルの状態、つまり元々ある性能のまま使うと、最新リールに慣れた人にとっては色々ストレスが溜まってしまいます。
ただ、人気のあるリールだけにカスタムパーツも豊富。
本記事の中で、オールドリール2500Cをできるだけ快適に使えるようにするパーツも紹介します。
まずは、「アブ アンバサダー 2500c」がどのようなリールなのかをまとめました。
アブ アンバサダー 2500c の魅力と特徴
アンバサダー2500Cの基本的な性能やスペック、魅力を紹介します。
基本性能
遠心ブレーキを採用し、本体の自重は250g。現在のバス用ベイトリールと比べるとやや重ためですが、当時としてはかなり小型な部類で、ルアーフィッシングに最適なアイテムでした。
ギア比1:4.7、ハンドル1回あたりのラインの巻き取りは約43㎝。1990年代以降、ギア比5.3のモデルも登場し、ハンドル1回転あたりのライン巻取り量は約48cmありました。
リールの高さは約550mm、幅は約600mmです。
アンバサダー 2500c の魅力
何より、今では種類の少なくなった純粋な丸型リールのデザインが「アブ アンバサダー 2500C」の魅力です。
丸型の原点というだけでなく、ベイトキャスティングリールそのものの基本とも言える外観。
また最近のベイトリールは、ロープロファイルモデルも丸型モデルも、大型ギアを格納するギアボックスが飛び出しています。
アンバサダー2500cはギアボックスの飛び出し部分が無いので、ほぼ左右対称に近い形状。
それでいて、同じABUの5000番台といったリールと比べ、小柄でルアーフィッシング用に使いやすい大きさです。
アブ アンバサダー 2500C の年式
1975年の登場以来、2500Cには様々な年式で復刻されました。その為、細かい仕様が微妙に異なります。
例えば、初期は刻印だったロゴマークが、比較的古い80年代には1部がシールに置き換わったり、汎用的な金属プレートに変わったりと様々。
ハンドルやドラグ、レベルワインダーといった機構部分の微妙に異からなっています。
自分も正確に判断し、見極める事はできませんが、80年代~1990年までのものであれば、リールフットのナンバー先頭2つが年式になっていると思っています。例えば、「821000」であれば82年モデル、「90-0 90-91」は90年式の仕様で91年まで販売が継続されていた..というイメージ。
1991年以降の90年代ナンバーは「020002」が92年モデルといった書式で、大体先頭が0、末尾が年式の1桁目を意味しているようです。
ただ2000年以降も復刻され続けており、ナンバーの記載ルールも都度変更されているので、確実な判断ではありません。
特定の年式を求める方もいらっしゃると思いますが、ロゴシールなどは剥がれていたり、別で張り替えていたりもするので、信頼できる目利きの方がすすめる品以外は、「これだから○○年モデル」と確定するのは難しいかもしれません。
場合によっては、パーツも新旧で入り混じって構築されている事も。
折角の歴史ある伝統的なリールなので、あまり年式にこだわらず、自分が巡り合った縁ある1台を手にする方が末永く楽しめそうですよね。
アンバサダー 2500c のデメリット
ベイトキャスティングリールの原点に近い形でかつ小型化された2500Cですが、1990年代頃にはもう性能的に「古くなった」と言われていました。
現代リールの視点から、2500Cのデメリットを紹介します。
重い
2500cと同サイズのベイトリールは、比較的価格が抑えめのエントリーモデルでも約200gあたりが主流です。
自重が250gある2500Cは、今の標準的なベイトリールと比べると50g前後重くなる計算。
たかだか50gですが、手に取る明らかに「重い」と感じ、軽いリールになれている場合は長時間使用での疲労感が変わってきます。
軽いルアーが飛ばない
発売当時は小型なリールでしたが、今の基準で考えると軽量ルアーが飛びません。
現在の小型リールなら2gのルアーでも快適にキャストできるものがありますが、2500Cは5gのルアーを十数メートル飛ばすのにも苦労します。
細いラインが使えない
アブのリールは当時としては高精度な製品。
ですが、今のように非常に細いラインで使う事を想定していませんでした。
2500Cの場合、6〜8lbといった細いラインを使うと、スプールとフレームの隙間に糸噛みを起こしやすいと感じています。
ブレーキの効き方が変わる
今の最新リールと比較すると、釣りをしているうちにリール内部に水が入りやすい構造です。
遠心ブレーキのシューが濡れると、内部が乾いて戻るまでブレーキの効きが悪くなる事も。
パーミングがしづらい
当時のリールとしてはコンパクトな2500Cですが、今のリールのようなオフセットフレームでは無い為、ロッド装着時に高さがあります。
使い慣れてるまでは、パーミングしにくいと感じるかもしれません。
アブ アンバサダー2500c (ABU Ambassador 2500C) のカスタム
前項の通り、古い設計であるが為に様々さまざまなデメリットのある2500cですが、使いこなす事ができれば、時代を超えたトラディショナルでノスタルジックなテイストを最高に満喫できます。
それでも、パーミング時のサイズ感などは2500Cを楽しむ味として考えられますが、実釣性能でストレスとなるポイントは改善したい所。
幸い、2500C用には様々なカスタムパーツが販売されています。
最も改善したいストレス軽減のポイントは、「スプール」「ブレーキ」「回転」の3点。
加えて、「見た目」のドレスアップも性能とは別の楽しみを得られるカスタムポイントですね。
軽量スプールに交換する
オールドタックルに限らず、ベイトリールで最も効果的なカスタムがスプール交換。
スプールを軽量なカスタム品に交換する事で、ルアー全般のキャストが軽快になります。
また、6lbクラスの細いラインでも糸噛みしにくくなり、軽量ルアーでも扱いやすくなるのがメリット。
さらに、スプール自体が軽いので、5g程と微妙ですがリール全体の軽量化にも繋がります。
2500cのカスタムスプールは、アベイル(Avail)から発売されているマイクロキャストスプール(Microcast Spool)が定番。
スプール溝の深さが2mm、4mm、6mmとラインナップされているので、用途に応じたパーツを選べます。
マイクロキャストスプールの性能・スペック
アベイル(Avail)アベイル マイクロキャストスプールのラインキャパは次の通りです。
スプール | 6LB | 8LB | 10LB | 12LB | 14LB | 16LB |
Microcast Spool AMB2520R | 55m | 45m | 40m | - | - | - |
Microcast Spool AMB2540R | - | 75m | 70m | 60m | - | - |
Microcast Spool AMB2560R | - | - | - | 80m | 70m | 60m |
おすすめは、溝の深さが4mmの「Microcast Spool AMB2540R」。
太い糸はあまり巻けませんが、ボディがコンパクトな2500cに相応しいライトバーサタイルなラインキャパです。
また、後の項で紹介するマグネットブレーキ仕様にするパーツも併用可能。
スプールの交換方法
アベイルのサイトでも紹介されていますが、スプールの交換はとても簡単。
リールにラインを巻く場合と同じくらいの手間や感覚で交換できるので、複雑な分解が苦手な方にでも問題ありません。
後述のマグネットブレーキ(別売)を用意しない場合でも、元々オリジナルで付いている純正の遠心ブレーキを移植して使用可能です。
マグネットブレーキ仕様にする
前項で紹介した軽量スプールの内、AMB2520RとAMB2540Rは、別売りのマグネットブレーキシステム「マイクロキャストブレーキ(Microcast Brake)」に対応しています。
マグネットブレーキ化する事で、キャスト事のブレーキが安定するので使いやすくなります。
ただし、このブレーキシステムは、対応するカスタムスプールとの組み合わせでしか使えないので要注意。
「Microcast Spool AMB2520R」用には、通常使用時のマグネットブレーキ「Microcast Brake AMB1520」と、PEライン向けにセッティングされた「Microcast Brake AMB1520PE」が対応。
「Microcast Spool AMB2540R」に対応するブレーキパーツには「Microcast Brake AMB1540」が用意されています。
スプールの回転を改善する
軽量スプール等のカスタムパーツを使用することで、2500cのキャスト能力はかなり改善します。
その他、次のような細かいチューニングでさらに回転性能を改善する事も可能。
①注油する
ベアリング用のリールは粘度が高いものを使うのがおすすめ。
より回転性能を求めた製品もありますが、スミスのリールオイル「IOSー02」は、適度な回り具合と耐久性のバランスが良好です。
②ベアリングを交換する
高性能なベアリングは、スプールの回転をより高めてくれます。
高回転な分、オイル切れも起こしやすいので、前述したような粘度の高いオイルがおすすめ。
ハイギア化する
昔のベイトキャスティングリールは、ギア比が低く、ハンドル1回転あたりのラインの糸巻量が少なめ。
あえて、クラシカルな巻取り速度でオールドタックルを楽しむのもいいですが、カスタムパーツでハイギア化も可能です。
ハンドルやスタードラグを替えドレスアップする
直接的な実釣性能に繋がる部分ではありませんが、ハンドルやスタードラグなど、見た目をよりハイクオリティなパーツに交換して所有感を高めるのもいいですね。
まとめ
オールドタックル、中でもその代表格とも言える「アブ アンバサダー 2500C」は、初期モデルから様々な復刻版を含めて、最高にスタイリッシュかつ洗練されたフォルムで、歴史の趣きを体感できるオールドリールです。
スプールやブレーキシステムなど、カスタムパーツの使用で使い勝手も向上するので、趣味の釣りを十分なパフォーマンスで楽しむこともできますね。
ある程度整備され、チューンナップされた2500Cであれば、5g程度のプラグを逆風化でバックラッシュなしに20mくらいはキャスト可能。
何より、フィールドに出る前から、その趣ある外観が独特で楽しい時間を提供してくれます。
機会があれば是非1度、2500cを手に取ってみてください。
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