出典:SHIMANO
シマノの2021年新製品、最大の目玉はやはり「21アンタレス DC」ではないでしょうか。
最高峰である事を常に課せられ、「誰よりも遠くへルアーをキャストする」宿命を義務付けられたベイトリール。しかも、デジタル制御のブレーキ「DCシステム」によって、トラブルを極力まで無くした使用感は一切の死角がありません。
(DCブレーキの電力は、スプール回転で自家発電するというから驚きですよね。)
むしろ、既に完成されたアンタレスDCから「何か進化する余地が残されているのか?」という疑問すら抱かざるを得ません。
自分自身、スプールの小径化やボディのコンパクト軽量化など、ロングキャスト性能を求める従来のアンタレスとは異なる、全く別の進化軸すら予想していました。
しかし「21 アンタレス DC」は、本来の使命である遠投性能から反れる事なく、ただ真っすぐに未来へと続く新型モデルチェンジ!
大げさな新機能や目玉となる変わり種ではなく、アンタレスDCが必要とされるスペックを、求められるままに劇的なブラッシュアップを遂げました。
本記事では、「21アンタレス DC」の魅力と特徴に迫り、いったい何が変わったのかをレビューします。
目次
2021 アンタレス DC | 特徴と魅力
公式サイト出典:SHIMANO
品番 | ギア比 | 最大ドラグ力 | 自重 | スプール寸法 | ナイロン糸巻量 | 最大巻上長 | ハンドル長 | ベアリング数 | 定価(円) |
RIGHT | 5.6 | 5kg | 220g | 径37mm/幅19mm | 12lb-130m、14lb-110m、16lb-100m、20lb-80m | 65cm | 42mm | 11/1 | 77,000 |
LEFT | 5.6 | 5kg | 220g | 径37mm/幅19mm | 12lb-130m、14lb-110m、16lb-100m、20lb-80m | 65cm | 42mm | 11/1 | 77,000 |
HG RIGHT | 7.4 | 5kg | 220g | 径37mm/幅19mm | 12lb-130m、14lb-110m、16lb-100m、20lb-80m | 86cm | 42mm | 11/1 | 77,000 |
HG LEFT | 7.4 | 5kg | 220g | 径37mm/幅19mm | 12lb-130m、14lb-110m、16lb-100m、20lb-80m | 86cm | 42mm | 11/1 | 77,000 |
XG RIGHT | 7.8 | 5kg | 225g | 径37mm/幅19mm | 12lb-130m、14lb-110m、16lb-100m、20lb-80m | 91cm | 45mm | 11/1 | 77,000 |
XG LEFT | 7.8 | 5kg | 225g | 径37mm/幅19mm | 12lb-130m、14lb-110m、16lb-100m、20lb-80m | 91cm | 45mm | 11/1 | 77,000 |
21アンタレス DCの性能・スペックは上記の通り。
そして、さまざまなシマノ最新テクノロジーが採用されています。
中でも特に目を引くのが「ソルト対応」。
マグネシウムボディに特殊なメッキが施されたアンタレス独特の外観は、これまで海水での耐久性がネックに。前モデルまでのアンタレスがソルト非対応なのを残念に思っていた方は多いのではないでしょうか。
しかし遂に、21アンタレスDCは「海水対応」モデルへと進化しました。
当然というか必然として、アンタレス独特の光り輝く美しいデザインはそのままに、完全なるソルト対応です!
その他の採用技術は次の通り。
マイクロモジュールギア
ギアを小型化し、数多く噛み合わせる事で滑らかな巻き心地を実現。
高剛性で高精度のメタルボディならではの精密さで可能となった特性です。
X-SHIP
パワーを効率よく伝達し、強力な巻き上げを可能にするギアシステム。
ハガネボディ(HAGANEボディ)
剛性と耐衝撃性を確保し、たわみを最小限に抑えることで安定した操作性を実現するボディ筐体設計。
MGL SPOOL Ⅲ(マグナムライトスプール スリー)
21アンタレスに搭載される「マグナムライトスプールⅢ」は、34mm径に幅19mmの幅狭にナロー化され、従来モデルより軽やかな立ち上がりを実現しています。
キャストフィールがより爽快に、トラブルレスな性能が向上。
S3Dスプール
キャスト時のスプール振動を軽減するテクノロジー。
振動ノイズが減るだけでなく、ライン放出時の回転ムラが減少、安定したキャスト性能を発揮します。
サイレントチューン
スプールを保持するベアリングにわずかな圧力をかけることで、高速回転時のベアリングの振動を減少させる機構です。これによりキャスト時のさらなる静穏性向上を実現。スプール回転の立ち上がりも一層スムーズになっています。
NEW 4×8DC
アンタレスDCのブレーキは、デジタルコントロールによる制御システム。
大きく4つモード(FL(フロロ)、P(PE)、NM(ナイロン)、X(エクストリームロングキャスト))に、8段階のダイヤルで強弱の調整が可能です。
ブレーキ調整幅こそ旧モデルと同様ですが、21アンタレスDCはキャスティング状態によってより繊細なデジタル制御を実現。
S A-RB
錆を寄せつけないベアリングを防錆素材でシーリングし、塩ガミを大幅に減少させたテクノロジー。
スーパーフリースプール
クラッチを切った際にスプールを極限までフリーにするシステム。
ハンドルガタ減少
ハンドル軸受部のベアリングを増やすことによってガタ付きを大幅に減らし、巻き上げフィーリングを向上しています。
海水OK
錆を寄せ付けない高性能ベアリング、外観の防腐処理で海釣りにも対応。
使用後はシャワーでの洗浄が推奨されています。
限界点を超える未到のキャスティング性能
出典:SHIMANO
前モデル「16アンタレスDC」でも、最高領域への遠投性能で高い評価があるアンタレスDC。
さらに進化した21アンタレスDCは、16アンタレスDCと比較して、より高精度で緻密なブレーキによってキャスティングの質が向上しています。
その秘密となる主要な技術は次の2つ。
「MGLスプールⅢによる低慣性化」と「高性能CPUによるブレーキ制御の精度アップ」です。
MGLスプールⅢによる低慣性化
出典:SHIMANO
2021年モデルのアンタレスDCは、徹底的なスプールの低慣性化が施されています。
21アンタレスに搭載されている「MGLスプールⅢ」は、耐久性を損なう事なく極限までに超薄肉化。薄肉化は、全体の自重ダウンだけではなく、遠心力の影響が特に大きいスプール外周が軽くなるメリットが大きいと言えます。
加えて、従来のアンタレスDCよりスープールが幅狭にナロー化。
ナロー化と薄肉化によってスプールの立ち上がりが向上し、軽い力でも鋭く初動の回転力が発揮されます。
つまり、軽いルアーやショートキャストでの使用感が向上。
また、微妙な変化でもレスポンス良く反応するスプールは、バックラッシュなどのトラブル減少も期待できます。
1つの疑問 | 低慣性化はロングキャストに必要か?
ですが、ここに1つの疑問が生じます。
これまで「スプールの低慣性化」は、バーサタイルリールの軽量特化やベイトフィネス用途のリールで積極的に導入されてきた技術。
遠投性能を求めるリールの場合、むしろ慣性を抑え込まず、スプールの回転をスポイルしない方が有利と考えられてきました。
また、スプール幅を狭めるナロー化は、糸痩せによる径の減少が大きく、キャスト後半にブレーキがかかりすぎる傾向も。
確かにスプールの低慣性化は、滑らかなキャストフィールを実現し、トラブルレス性能が向上します。
ただ、全体的なキャストが爽快になるのはともかく、軽量ルアーやショートキャストなどへの対応は、アンタレスDC本来の目的から外れているような印象も受けました。
この疑問を解決するのが、次で紹介する「DCブレーキの精度アップ」です。
「NEW 4×8 DC」 - 高性能CPUによるブレーキ制御の精度アップ
出典:SHIMANO
21アンタレスDCのブレーキは、4つのモード(フロロ、PE、ナイロン、エクストリームロングキャスト)をそれぞれ8段階に強弱を変える事ができる「4×8」のDCセッティング。
一見、前モデル「16アンタレスDC」と比べても変わりが無いブレーキシステムです。
ただその中身は大きく変わり、21アンタレスDCは、高速CPUでより多くの情報を整理する「NEW 4×8DC」にバージョンアップしました。
ぶっちゃけ、ベイトルールのCPUが高速になっても、あまり意味が無いようにも思えますよね。しかし、より多くの情報量を素早く処理できるようになった事で、今まで以上に状況変化を細かく分析した調整が可能。
ルアーの空気抵抗によるキャスト弾道の微妙な変化や、ちょっとした風の流れなど、これまでは多少の誤差があっても大きく変わらないと一律で処理されていたブレーキが、より細かく制御される事を意味します。
このブレーキ制御が精度アップされた特性は、立ち上がりのレスポンスが良い低慣性な「MGLスプールⅢ」との組み合わせ相性がバツグン。
細かい制御で絶妙なブレーキを調整する事で、機敏に反応するスプールを自在にコントロールできると言えます。
遠心やマグネットなど、通常のアナログ物理法則なブレーキであれば、スプールの低慣性やナロー化によってロングキャスト性能がスポイルされる事も。
そのアナログではネックとなる低慣性な特性を、精度の高いデジタル制御で緻密にコントロールする事で、自然な物理法則では困難な遠投性能を実現したと言えそうですね。
ナロースプールで低慣性化されていても、ブレーキ制御が適切でスプール回転に支障が無いのであれば、むしろライン放出角度によるロスも軽減。キャストフィールが良くなるプラス材料になります。
実際、シマノのプロスタッフによるインプレでは、「キャスト後半の伸びが向上し、飛距離がアップした」と語られていました。
とは言え、自社製品のインプレなので、「スタンダードモデルがコストの割に高性能!」と大げさに発言する事はあるかもしれません。
しかし、フラッグシップ機「アンタレス」の最も重要な飛距離についての発言なので、かなり確かなインプレッションだと思います。
▲31.5gのバイブレーションを176Hでキャストする秦 拓馬プロ。スプールいっぱいより若干少な目なライン量にも見えますが、12lbフロロなので100m以上は軽く巻いていると思われます。軽いナイロンではなく、フロロカーボンラインでのテストってのがいいですね。
出典:SHIMANO
▲フルキャストでラインが全部出ちゃいました(笑)オーバーなパフォーマンスかもしれませんが、分かりやすいです。出典:SHIMANO
これまでのアンタレスDCから劇的に最高飛距離到達点が変わる...は大げさだとしても、よりイージーに最高飛距離を出しやすく、セッティングによってはさらなる可能性も見えてくるのではないでしょうか。
しかも、ショートキャストや軽いルアーも快適に、トラブルレス性能も向上し、キャスト全体のフィーリングがアップすることで、キャスタビリティの精度も上がるリールに仕上がっていると言えます。
究極のキャスト性能をキープする技術群
「スプールの低慣性化」と「ブレーキの精度アップ」だけが21アンタレスDCの秘密ではありません。
「S3Dスプール」や「サイレントチューン」といった、高速回転するスプールのブレを抑え、静寂性を追求したシマノの各技術が、21アンタレスDCの高性能・高精度をキープ。
そして、しっかりとした大きさのある頑丈なハガネボディによって、21アンタレスDCの圧倒的な飛距離は、過酷な状況下でも変わらずに発揮できる設計となっています。
アンタレス DC 2021 | ギア比による活用法
アンタレスDCは、比較的大型なボディ。
それでも、2012年に発売されたアンタレス以降、サムレフト周りを含むリール上部が平らになって、大柄ながらもしっかりとパーミングしやすくなったと感じています。
最近のアンタレスの形状は、自分的にかなり好みで、手感度も良好。
小型のトップウォーター等をロッドワークでアクションするような用途には不向きかもしれませんが、中~重量級ルアーをしっかりリーリングするには最適です。また、大型のジャークベイトやトップを力強くアクションさせたり、カバーからビッグバスを力強く抜き上げる場合にも、がっしりとしたボディは使いやすいですね。
自重も220~225gと決して重すぎず、遠投性能に特化したモデルながら、意外とバーサタイルに使えちゃうのが魅力。
デジタルブレーキはバックラッシュの防止機能が高く、無理やりライトリグを投げれない事もありません。
そして、注目はギア比。
21アンタレスDCは、ノーマル・HG・XGの3タイプのギア比が発売されます。
ロングディスタンスでの使用を考えると、HGモデル(ギア比7.4、巻き取り長86cm)が一番人気ではないでしょうか。
巻き取り長が80cmを超えるスピードがあり、ハイギアすぎない7.4という比率は十分なパワーもあります。
PEラインを巻いてソルトで活用される方や、より速い巻き取りが必要な釣りには、XGモデル(ギア比7.8、91cm)もおすすめ。
さらに注目は、ノーマルモデル(ギア比5.6、巻き取り長65cm)です。
引き抵抗の強いディープクランクや、リップ付きの大型ルアーでも快適に巻けるギア比でありながら、巻き取り長は65㎝と一般的なバーサタイルベイトリールと変わらないスピード。
集中して丁寧に巻かなければ釣れないような状況でも、ノーマルギアのアンタレスDCなら、自然とスムーズなリーリングをキープしてくれますね。
巻物専用リールに匹敵する使い勝手の良さと、他の釣りにでも十分対応できる速度が、ノーマルギアのアンタレスDCにあります。
タックルインプレッション
プロアングラーによる「2021 アンタレス DC」のインプレを抜粋して紹介。
動画などで印象的だったのが、「しっかりブレーキが効きながらも、さらに飛ぶようになっている」という言葉。
徹底した低慣性化で、さまざまな条件のキャストフィールが向上しつつも、遠投性能が損なわれていない事を的確に述べたレビューだと思いました。
出典:SHIMANO
「伊豫部 健」プロは、「自分が思い描いたとおりに飛んでくれる」と語っています。
逆風時などのブレーキがかかる状況でも、ルアー失速前の“ひと伸び”が、正確なアプローチを可能にしてくれるとの事。
出典:SHIMANO
アンタレスDC使いとしても有名な「秦 拓馬」プロは、ハッキリと「飛距離が飛伸びた」と仰っています。
その違いは数メートル程かもしれませんが、アンタレスDCを極限までに使い込んだプロが違いを体感できるのは驚きですね。
自分で使ったインプレッション
実際に自分も21アンタレスDCを購入して使ってみました。
インプレをレビューしているので、参考にしてみてください。
まとめ
出典:SHIMANO
「アンタレス DC 2021年モデル」は、従来通りの高い遠投性能が、より爽快で快適なフィーリングに生まれ変わったベイトリール。
遠投性能だけを求めるのであれば従来機種でも十分かもしれませんが、軽量ルアーやショートキャストでの使い心地が向上し、ブレーキ制御の精度が向上したことで、全体的な使用感のアップが期待できます。
また、物理法則だけでブレーキをかけるリールとは異なり、CPUの高速化による制御密度の増加は、20メタニウムといった軽量ルアーへ適正が向上している最新バーサタイルリールへも転用されていく事が考えられます。
もしかすると、ベイトフィネスのような領域にまで、デジタルならではの制御が可能になってくるかもしれません。
21アンタレスDCは、そうした未来のリール像を先取りする、最高峰フラッグシップ機に相応しいテクノロジーが結集していると言えますね。
とにかく圧倒的な飛距離が欲しい方、その上でバーサタイルな使用感も快適であって欲しい人、最新で最高品質のベイトリールを使ってみたいアングラーに、21アンタレスDCは究極のベイトリールです。
気になる発売日は、右モデルが2021年3月、左モデルは5月の予定。
21 アンタレスDC に合うロッド
動画の中で「秦 拓馬」プロは、21アンタレスDCを176Hに装着していました。
おそらくポイズングロリアス「ブラッシュバスター76」だと思うのですが、奇しくも2021年にグロリアスはモデルチェンジ。現時点で176Hはラインナップされていません。
代わりにおすすめなロッドは、2021年モデルの「ポイズングロリアス 174MH+」。
大規模フィールドにバーサタイルに扱えるロッドで、スイムジグのような巻物から、テキサスやフリリグといった底物でのフィネスアプローチも可能な汎用性が魅力。
また、2021年モデルからMHにパワーがプラスされた事で、1oz超えのヘビキャロやスイムベイト、ハネモノ等への対応力も上がっています。
使い心地のアップした21アンタレスDCに最適なバスロッド。琵琶湖で70upを連発しているバイブレーション「TN80」のド遠投にも良さそうですね。
その他のベイトリール
他のベイトリールは2021年新製品に興味をお持ちの方は、次の記事も参考にしてみてください。